【製造請負への影響は?】「下請法」が「取適法」へ!改正のポイントと実務上の注意点を解説

令和8(2026年)1月1日より、従来の「下請法」が改正され、「中小受託取引適正化法(取適法:とりてきほう )」として施行されました。

今回の改正により、取引の種類が4から5類型に増え、資本金基準に加えて「従業員数基準」の要件が追加されたことで、これまで対象外だった企業も法律の規制対象となる可能性があります。

今回は、取適法によって具体的に何が変わったのか、そして製造請負への影響について詳しく解説します。

何が変わる?下請法から「取引適正化法」へ

下請法は、独占禁止法を補う法律として昭和31(1956)年に制定されました。今回の法改正の目的は、取引の公正化と下請事業者の利益保護の2点です。

それでは、下請法から取適法への改正で、具体的に何が変わるのでしょうか。改正のポイントは以下の3点です。
1. 用語の変更
2. 対象範囲の拡大
3. 禁止事項の厳格化

それでは、各ポイントを詳しく解説します。

用語の変更

下請法から取適法に改正するにあたって、具体的には以下のように法律名や用語が変更となっています。

対象取引が追加

取適法では、従来の4類型の取引に加えて新たに「特定運送委託」が対象になり、全5類型となります。

1. 製造委託
2. 修理委託
3. 情報成果物作成委託
4. 役務提供委託
5. 特定運送委託(新設)

特定運送委託とは、事業者が販売する物品、製造・修理を請け負った物品などについて、取引の相手方に対して運送する場合に、運送業務を他の事業者に委託する取引です。

長時間の荷待ちや不当な荷役作業の強要など、物流業界で問題となってきた不適切な取引慣行を是正することを目的として新たに設けられました。

従業員数基準の新設

これまで下請法では、発注者と受注者の資本金規模によって適用対象が限定されていました。取適法では「資本金規模」に「常時使用する従業員数」の要件が加わり、いずれかに該当すれば取適法の対象と判断されます。

具体的な基準は図の通りです。

発注者に課される義務の追加

取適法では、委託事業者に対して、下請法と同様に4つの基本的な義務が課されています。義務については内容の明確化や追加が行われ、実務上の対応範囲が拡大しています。

以下では、従来法からの変更点および新たに追加された内容を整理します(追加事項は赤字で表示)。

1.取引記録の作成・保存義務
委託する業務内容、報酬額、支払状況など、取引に関する一連の事項について書類または電磁的記録を作成し、2年間保存する義務があります。

2.発注内容等の明示義務
発注後直ちに、委託内容、報酬額、納期、支払期日などの契約事項を記載した書面、または政令で定める電磁的方法による記録を交付する義務があります。なお、口頭のみの発注や、内容が曖昧な依頼は認められません。

※法改正により、書面交付については、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メール等の電磁的方法による交付が可能となりました。

3.支払期日を定める義務
支払期日は、成果物を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定める必要があります。

4.遅延利息の支払義務
支払期日までに報酬を支払わなかった場合、受領日から60日を経過した日から実際の支払日までの期間について、年率14.6%の遅延利息を支払う義務があります。

また、正当な理由なく報酬を減額した場合には、減額日または受領日から60日を経過した日のいずれか遅い日から、減額分を支払う日までの期間について、同様に遅延利息の支払義務が生じます。

禁止行為の厳格化

取適法では、委託事業者に対して全11項目の禁止行為が定められており、従来の下請法と比べて規制内容が明確化・厳格化されています。

特に、これまでグレーとされがちだった取引慣行についても、違反となる考え方が明示されました。以下、従来法からの変更点および新たに追加された禁止行為を整理します(追加事項は赤字で表示)。

1.受領拒否
中小受託事業者に責任がないにも関わらず、発注した物品等を受け取らないこと。

2.支払遅延
支払期日までに代金を支払わないこと。
+手形払等を用いること。
+その他の支払手段(電子記録債権等)のうち、期日までに代金相当額満額を得られない方法。

3.減額
中小受託事業者に責任がないにも関わらず、発注時に決定した代金を発注後に減額すること。
+合意の有無にかかわらず、振込手数料を中小受託事業者に負担させること。

4.返品
中小受託事業者に責任がないにもかかわらず、受領後に発注した物品等を返品すること。

5.買いたたき
発注した物品等について、通常支払われる対価に比べて不当に低い代金を定めること。

6.購入・利用強制
正当な理由がないにもかかわらず、指定する物品や役務の購入・利用を強制すること。

7.報復措置
公正取引委員会、中小企業庁、+事業所管省庁に違反行為を知らせたことを理由に、取引数量の削減や取引停止など、不利益な取扱いを行うこと。

8.有償支給原材料等の対価の早期決済
有償支給した原材料等を用いて製造等を行わせる場合に、代金の支払期日より前に、原材料等の対価を支払わせること。

9.不当な経済上の利益の提供要請
中小受託事業者に金銭や役務等を不当に提供させること。

10.不当な給付内容の変更、やり直し
中小受託事業者に責任がないにもかかわらず、発注の取消しや内容変更を行い、無償でのやり直しや追加作業をさせること。

11.協議に応じない一方的な代金決定(追加)
中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じない、または必要な説明を行わず、一方的に代金を決定すること。

違反した場合のペナルティ

取適法では、違反行為に対する監督・執行体制が強化されています。

従来は公正取引委員会と中小企業庁が違反行為に対して指導・助言を行ってきましたが、法改正により事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言の権限が付与されています。

違反の疑いがある事業者に対しては調査が実施され、是正が求められます。また、指導・助言を受けたにもかかわらず改善が見られない場合には勧告が行われ、公正取引委員会の取適法勧告一覧にてその事実が公表される可能性があります。

さらに、取適法で発注者に課される書面の作成・保存義務や、発注内容の明示義務に違反した場合には、50万円以下の罰金が科されることがあります。

このように、取適法違反は企業の社会的評価や信頼に大きく影響するため、法律規則の理解と周知の徹底が必要です。

【一覧で比較】「下請法」と「取適法」の違い

下請法と取適法の違いを以下にまとめます。(変更点・追加事項は赤字で表示)

担当者が押さえるべき「実務上の注意点」

チェックポイントのイメージ

従来の下請法を遵守してきた事業者であっても、取適法では取引対象が拡大されるため、管理すべき取引の範囲が広がる可能性があります。加えて、これまで下請法の適用外であった企業が、新たに委託事業者として法的義務を負うケースもあります。

ここからは、法改正における実務上の注意点について解説します。

自社の取引関係の点検

自社が行っている業務委託取引を洗い出し、委託事業者に該当する取引と、受託事業者に該当する取引を整理する必要があります。

特に重要なのは、これまで下請法の対象外だった取引先の把握です。

例えば、資本金が基準以下であっても、従業員数が基準(300人超または100人超)を超える企業が発注者となる場合、新たに取適法の義務・禁止事項の遵守が課せられることになります。

また、受託者が個人事業主やフリーランスであっても、資本金基準または従業員数基準のいずれかを満たせば、取適法の中小受託事業者として保護の対象となります。

契約書・発注書フォーマットの見直し

取適法で明示が義務付けられている「書面の作成・保存義務」に対応するため、契約書や発注書のフォーマットを見直しましょう。

以下の項目が漏れなく記載されているかを確認し、必要に応じて改訂してください。これらの項目はすべて必須事項であり、記載漏れは違反となります。

  • 1.

    委託事業者および中小受託事業者の名称

  • 2.

    製造委託等を行った日

  • 3.

    中小受託事業者の給付内容(仕様、規格、数量等)

  • 4.

    給付を受領する期日・場所

  • 5.

    検査を完了する期日(検査を行う場合)

  • 6.

    製造委託等代金の額

  • 7.

    代金の支払期日

    • a.

      一括決済方式で支払う場合:金融機関名、貸付等を受けられる額、期間の始期、決済日

    • b.

      電子記録債権で支払う場合:債権額、期間の始期、満期日

  • 8.

    原材料等を有償支給する場合:品名、数量、対価、引渡日、決済期日、決済方法

  • 9.

    支払方法:現金、振込、電子記録債権等の別(振込手数料の負担区分も含む)

  • 10.

    未定事項がある場合:未定の理由、内容を定める予定期日

製造請負への影響:対象となる範囲とは

製造業では、自社で販売する製品やその部品の加工・製造を委託する場合が取適法の対象となります。法改正により、法律の適用対象となる「製造委託」の範囲が拡大されています。

これにより、これまで下請法の対象外と認識されていた取引についても、取適法の適用対象となる可能性があります。

金型以外の治具・専用工具も対象に

従来の下請法では、物品の製造に用いる「金型」の製造委託が対象とされていましたが、取適法ではこれに加え、「金型以外の治具・専用工具等」の製造委託も新たに対象に含まれています。

「金型以外の治具・専用工具等」には、木型や樹脂型、治具等が該当します。

これまで対象外とされてきた取引であっても、取適法の適用対象となる場合があるため、入念な確認が必要です。

まとめ:平山の製造請負なら法令順守とコスト最適化を両立

平山の製造請負のイメージ

取適法は、公正な取引の確保を目的とする法律であり、2026年1月の法改正は、製造請負においても企業評価や信頼に直結しています。違反が認定された場合には、指導・勧告にとどまらず、企業名の公表や罰則が科される可能性もあり、現場任せの請負取引は大きな経営リスクとなり得ます。

平山は「製造請負優良適正事業者」として、取適法を前提とした請負管理体制を確立しています。需要変動に柔軟に対応する請負体制の整備に加え、現場改善コンサルティング部門と連動し、コンプライアンスと生産性を両立する請負体制を提供しています。

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