製造業の品質管理・検査では、人手不足や技能継承など、さまざまな課題が顕在化しています。こうした課題への対応策として注目されているのが、AIをはじめとするデジタル技術の活用です。本記事では、品質管理・検査におけるAI活用の可能性と、現場起点でDXを進めるためのポイントを紹介します。
近年製造業では、人手不足などを背景に、限られた人員で生産活動と品質管理を両立することが求められています。そのため、検査業務の効率化は重要な課題の一つです。
品質管理・検査において特に課題となりやすいのが、人の目と経験に頼る検査の工程です。目視検査では、検査員の経験やスキルによって判定にばらつきが生じる可能性があります。また、どれだけ経験豊富な従業員であっても、長時間の作業による疲労や集中力の低下により、見落としが発生するリスクもあります。人手不足に加えて、働き方改革による労働時間の適正化も求められるなか、いかに検査品質を保つかが課題となっています。
加えて、熟練した検査員の退職によって、長年の経験や勘に基づく検査ノウハウが失われることも重大な課題です。新人を育成しようとしても、熟練者が持つ感覚的な知識を短期間で引き継ぐことは難しく、検査品質を安定させるまでには時間がかかります。
実際に、総務省「労働力調査」によると、製造業における高齢就業者(65歳以上)の割合も2002年の4.7%から2025年には8.2%まで上昇しており、製造現場のベテラン層への依存はさらに強まっているといえます。一方、34歳以下の若年就業者の割合も、2000年代初頭は30%を超えていたものの、近年は25%前後で推移しています。こうした現場における年齢構成の変化により、ベテラン検査員が持つノウハウを次世代へ引き継ぐ人材そのものが不足しつつあり、技能継承の難しさに拍車をかけています。
こうした背景から、検査員の負担を抑えながら検査品質を安定させる手段として、AIが注目を集めています。たとえば、AIによる画像認識を活用すれば、製品画像から傷や汚れなどを自動で検出できます。検査員の負担軽減が期待できるだけでなく、検査工程全体の効率化にもつながり、限られた人員でも安定した品質管理を実現しやすくなります。
さらに、AIの活用は単純な検査業務の自動化にとどまりません。異常検知による不良や設備トラブルの早期発見、データ分析による原因究明や改善活動など、品質管理におけるさまざまな課題への対応が期待できます。
AIは、製造業の品質管理・検査において、さまざまな場面で活用が進んでいます。なかでも注目されているのが、画像認識による外観検査や、設備・製造工程の異常検知、蓄積された品質データの分析です。
ここでは、品質管理におけるAIの代表的な活用方法と、それによって期待できるメリットを紹介します。
AIの代表的な活用例が、画像認識技術を利用した外観検査です。製品を撮影した画像や動画をAIが解析し、傷や汚れ、欠け、異物混入、色ムラなどの異常を自動で判定します。ディープラーニングの活用により、目視では判別が難しい高度な検査の自動化も可能になりつつあります。目視検査をAIが補助・自動化することで、検査員の負担を軽減するとともに、判定のばらつきを抑え、検査品質の安定化にもつながります。これにより、従業員はより重要な判断が求められる業務に注力でき、工程全体の生産性向上も期待できます。
AIは、設備や製造工程の異常を検知するためにも活用できます。設備から取得・蓄積した温度や振動、電流などのデータをAIで分析し、異常を早期に検知することで、設備異常や品質不良につながる兆候を発見します。これにより異常が発生しやすい状況の傾向を把握できれば、設備トラブルや不良が発生する前に点検・調整などの対応を取りやすくなり、突然のライン停止や不良品の発生リスク低減にも役立ちます。
さらに、AIは検査結果や製造条件、設備データなど、現場に蓄積されたさまざまなデータの分析にも活用できます。複数のデータを組み合わせて分析することで、「どのような条件で不良が発生しやすいのか」といった要因を把握しやすくなります。これまで熟練者の経験や勘に頼っていた原因究明や改善活動も、データに基づいて進めやすくなり、製造現場における技能継承の課題の緩和にもつながります。
AIやデジタルツールを最大限活用し、製造現場のDX化を成功させるためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
DXを進めるうえでまず重要なのは、「現場のどこに課題があるのか」を把握することです。たとえば外観検査をAI化する場合でも、製品の種類や検査基準、検査員の作業工程、既存の設備との連携などによって、適した仕組みは異なります。デジタル技術ありきで考えるのではなく、製造現場の業務や課題を理解したうえで、AIを「どの業務に・どのように活用するのか」を検討することが求められます。
「2026年版ものづくり白書」のアンケート調査によれば、製造業におけるデジタル技術活用戦略を社内で共有・理解するためには「現場部門」が主導することが有効である一方、戦略を成果につなげるうえでは「社内横断組織/経営企画部門」による主導が一定の役割を果たしていることが示されています。
つまり、製造業においてDXを着実に進めるためには、現場の実態を理解しながら、経営の視点をあわせ持つことが欠かせません。両者の視点を組み合わせることで、現場の納得感と経営判断のスピードを両立し、DXを現場に定着させやすくなることも期待できます。
限られた人材や予算のなかでDX化を進める製造業では、全体を俯瞰したうえで、取り組むべき課題の優先順位を定める必要があります。「現場起点」の考え方を軸としながら、経営上の優先順位や投資対効果、リスクなどもあわせて踏まえ、AI・デジタル技術の活用方法を検討することが重要です。
平山は、これまで国内外のさまざまな製造現場に向き合い、ものづくりや現場改善に関するノウハウを蓄積してきました。だからこそ、DXにおいても単にAIやデジタルツールを導入するだけではなく、現場の業務や課題を理解したうえで、経営者目線で全体を俯瞰し、投資対効果やリスクとのバランスを踏まえながら、活用すべき箇所を見極めることを大切にしています。
以下では、具体的な取り組み事例を紹介します。
平山グループでは、製造業・流通業における現場改善支援とともに、現場の状況に合わせたDX推進の提案や、セミナー開催を通したDX支援を行っています。
こうした支援を通じて、実際に電子機器メーカーA社では、DXベンダーと連携して在庫管理の改善に取り組み、在庫金額を20%削減するとともに、業務時間を20%効率化しました。また、食品メーカーB社では、DXツールの導入支援やデータ分析などを通じて、在庫金額20%削減、物流費・外注費15%削減を実現しています。
また、当社のAI活用の取り組みの一つとして、労働災害防止支援サービス「HAio(ハイオ)」の開発が挙げられます。これは、AIを活用して従業員の心身状態の変化などを分析し、不安全行動による労働災害のリスク低減を支援するシステムです。品質管理・検査に限らず、安全管理など製造現場の課題にAIを活用した、平山の取り組みの一例です。
平山は2024年6月1日付で、経済産業省が定める「DX認定事業者」に基づく認定を取得しました。「DX 推進ビジョン」をもとに、新サービスの開発や生産性向上、DX人材の育成などの取り組みを推進しています。また、生成AIを含む人工知能の実務実装や、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の開発・実装を推進する「DXチーム」を中心に、生成AIの組織的な活用など、さらなるDXの推進を計画しています。
当社はデジタル技術の導入そのものを目的とするのではなく、製造現場の具体的な業務や課題を起点に、適切な技術やシステムを組み合わせることで、製造現場の改善を進めています。これまで培ってきた「現場力」とデジタル技術を掛け合わせ、製造業をはじめとする企業のDX推進を支援していきます。
製造業におけるAIの活用は、外観検査や異常検知、データ分析など、品質管理・検査をはじめとするさまざまな業務で広がっています。一方で、AIを導入すること自体が目的になってしまい、現場で十分に活用されず、期待した成果につながらないといった事例もあります。重要なのは、現場の業務を深く理解し、課題を整理したうえで、その解決法としてAI・デジタル技術を活用することです。
平山は、これまで製造現場で培ってきたノウハウとAI・デジタル技術を掛け合わせ、現場の課題に合わせたDX推進を支援しています。「AIを活用したいが、どこから始めればよいかわからない」「DXを進めたいが、現場でうまく活用できない」といったお悩みは、ぜひ一度平山までご相談ください。
製造業のDXとは | 現場改善なら平山コンサルティング
「現場改善コンサルティング」「製造請負」「製造派遣・人材紹介」という事業の中で培った社員教育ノウハウを活かし、出張セミナーや研修運営等さまざまな人材教育事業を提供しております。
研修・セミナーの内容もご要望に応じてカスタマイズすることもできます。人材の育成・教育にお悩みでしたら御気軽にお問い合わせください。
短期的な人員の補充には「派遣」、正社員雇用が必要な場合は「紹介」という形で、お客様のご要望にマッチした、即戦力となる人材をお届けいたします。
製造業における技術はもちろん、「充実した教育体制(ソロフライトプラン)」と「カウンセリングシステム(ココロケアサポート)」を取り入れ、ヒューマンスキルも備えた優秀な人材を育成しております。
「機械設計」「電気電子設計」「ソフトウエア開発」「プラント設計」など、高度な技術力を要求されるこれらの分野でも高い評価をいただいています。
トップレベルのスキルを持つエンジニアから、サポートを行うスタッフまで、幅広い技術者を取りそろえて、お客様の開発環境の最適化を支援しています。開発&設計技術者派遣事業については、平山グループ内の(株)トップエンジニアリングが担当いたします。
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