製造現場で外部リソースを活用する際、製造請負と業務委託のどちらを選べばよいのか迷うケースは少なくありません。両者は似ているようで、法律上の定義や報酬の発生条件などに明確な違いがあります。実務上の注意点を知らずに誤った契約形態を選ぶと、偽装請負として法律違反に問われるリスクもあります。
この記事では、製造請負と業務委託の基本的な違いから、自社に合った契約形態の選び方まで、実務担当者が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。
製造請負と業務委託の大きな違いは、報酬が支払われる対象にあります。製造請負は「成果物の完成・納品」であるのに対し、業務委託(準委任型)は「業務の遂行」であるという点が異なります。
製造請負と業務委託それぞれの定義と法律上の仕組みについて、さらに詳しく解説していきます。
製造請負とは、製品や部品などの製造を外部の事業者(請負業者)に委託し、完成品の納品に対して報酬を支払う契約形態です。製造請負では「指定された部品の完成品を1万個製造し、納品する」といった、成果物の引き渡しが求められます。
法律上は、
「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」(出典:民法第632条)
と定められています。
製造請負には「契約不適合責任」が伴うため、請負業者は納品した製品が契約内容に適合しない場合、一定の責任を負います。もし製造請負の成果物の中に不良品が混在していた場合、注文主は請負業者に対し、製品の作り直しや代替品の納品などを請求できます。
製造請負について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
業務委託とは、一般的には自社の業務を外部の企業や個人に委託する契約の総称です。ただし「業務委託契約」という名称は正式な契約類型ではなく、「請負契約」「委任契約」「準委任契約」などの総称として使われています。
実務上、製造現場において外部業者に品質管理業務や設備点検などの業務の遂行を委託する場合は、業務委託のうちの「準委任契約」に当たる場合があります。この場合、業務の遂行や契約で定めた期間・時間・工数などに対して報酬が発生します。
また、業務委託(準委任契約)の場合、適切な手順で業務を遂行していれば、受託者は原則として成果物に対する責任を負いません。
製造請負と業務委託は、どちらも外部リソースを活用する契約形態ですが、報酬の発生条件や責任の所在など、実務上の違いは少なくありません。まずは両者の違いをまとめた上で、それぞれのメリット・デメリットを確認しましょう。
製造請負と業務委託(準委任型)の主な違いは、以下の通りです。
①コスト管理が容易
成果物の完成を条件に報酬が発生するため、繁忙期・閑散期に合わせて発注量を柔軟に調整でき、固定費などのコスト削減につながります。
②管理負担の軽減
労働者の雇用管理・労務管理は請負事業者が担います。そのため、自社の人事・総務部門の負担を大幅に減らせます。
③専門技術の活用
製造請負業者は製造に特化したノウハウを持っており、高品質の製品を効率的に生産することができます。
④リスクの分散が可能
設備故障や現場管理の負担など、製造に関連するリスクを分散させることができます。
①工程への直接関与が制限される
製造請負では、発注者が製造工程に直接指示を出すと偽装請負になるリスクがあります。そのため、仕様変更や追加業務が生じた場合の対応ルール等をあらかじめ書面に明記しておくことが重要です。
②依存度の管理が必要
製造工程を長期間外部に委託し続けると、社内の製造能力や技術力が低下するおそれがあります。製造請負の継続か内製化かを、中長期的な視点で判断することが求められます。
③不良品発生時の対応
納品された成果物に不具合がある場合、代替物や不足分の納品、または報酬の減額請求は可能ですが、発注者が事前に直接工程に介入することはできません。あらかじめ品質基準や不良品の扱いを契約書に明記しておくことが大切です。
①専門ノウハウの活用
品質検査・設備保全・工程改善などの専門的な業務を、外部の人材の知見を活かして遂行できます。
②業務範囲の柔軟な設定
成果物の完成よりも「業務の遂行」を目的とするため、継続的な管理業務や技術支援など、幅広い業務に対応できます。
③固定費の変動費化
必要な業務・期間だけ契約することで、正社員雇用に比べて人件費を柔軟にコントロールできます。
①成果物の品質保証がない
受託者が誠実に業務を遂行していれば、成果物が完成しなくても報酬が発生します。業務委託を選ぶ際は、期待する成果を契約書に可能な限り具体的に記載することが重要です。
②コスト管理の難しさ
業務の遂行時間・工数に応じて費用が発生するため、作業が長引くほどコストが膨らむ可能性があります。
③業務範囲・責任範囲が曖昧になりやすい
業務委託は、成果物の完成ではなく業務の遂行を目的とするため、依頼する業務範囲や責任範囲が曖昧になりやすい場合があります。業務内容、報告方法、対応範囲、判断基準などを契約書に明記しておかなければ、期待する成果とのズレや追加費用の発生につながる可能性があります。
製造請負や業務委託では、発注者が受託者の作業者に対して直接指揮命令を行うと、偽装請負と判断されるおそれがあります。
偽装請負とは、契約上は請負や業務委託の形をとりながら、実態として労働者派遣に該当する働かせ方をしている状態を指します。実態によっては法令違反となり、委託者・受託者の双方が行政処分や罰金の対象となる可能性があります。
偽装請負に該当するかどうかは、厚生労働省が定める「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(いわゆる「37号告示」)にもとづいて判断されます。契約書上の形式だけではなく、「実態」が重視される点に注意が必要です。
偽装請負については、こちらの記事で詳しく解説しています。
製造請負と業務委託のどちらを選ぶべきかは、以下の3つの観点から判断するとよいでしょう。
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成果物か業務遂行か
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指揮命令の所在
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コストと責任範囲のバランス
まず「何に対して報酬を支払うか」という観点で判断しましょう。たとえば、ある製品1万個の製造を外部に依頼する場合、製造請負では1万個の完成品が納品されてはじめて報酬が発生します。一方で、同じ依頼を業務委託で行うと、たとえ完成品が5千個であっても、作業した時間・工数に応じた報酬の支払い義務が生じます。そのため、品質検査・設備保全など業務の継続的な遂行が目的の場合は、業務委託が適しています。
製造工程を一任し、納期・仕様が明確な完成品を納品してほしい→製造請負
特定業務の継続的な遂行を任せたい→業務委託
「誰が作業者に指示を出すか」という観点も重要です。製造請負・業務委託のいずれにおいても、発注者が受託者の労働者に直接指揮命令を行うことはできません。現場で作業者に細かく指示を出す必要がある場合は、製造請負・業務委託ではなく、製造派遣の活用を検討しましょう。
業務の遂行や成果物の完成を外部に一任したい→製造請負または業務委託
自社の社員が現場で直接作業指示を出したい→製造派遣を活用
製造請負と製造派遣の違いについては、以下の記事をご参照ください。
製造請負では、不完全な成果物が納品された場合に作業のやり直し・代替品や不足分の引き渡し・報酬減額などの請求が可能です。コスト管理がしやすい反面、製造工程への関与に制限があります。業務委託では、受託者が民法第644条に定める注意義務(善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務)を果たしていれば、成果物が完成しなくても責任を問いにくいケースがあります。
成果物の品質・納期を厳しく管理したい→製造請負
専門的なノウハウを継続的に活用したい→業務委託
契約形態の見直しに悩む企業に向けて、平山が実際に支援した成功事例をご紹介します。
A社では、派遣・請負・正社員・契約社員が同じ現場に混在しており、指揮命令系統の所在が曖昧な状態が続いていました。コンプライアンスを徹底できないことが品質のばらつきや固定人件費の膨張につながっており、抜本的な見直しが必要な状況でした。
そこで、契約社員を平山に転籍のうえ、請負チームによる製造支援を実施しました。その結果、指揮命令系統が明確化され、コンプライアンスの徹底による安定した品質の確保と、人件費のスリム化を同時に実現しました。
B社はシーズン需要の変動を受けやすい商品を扱っており、生産量の増減のたびに人材の募集・解約を繰り返していました。採用・解約にともなうコストや労務負担が課題となっており、変動に柔軟に対応できる生産体制の構築が急務でした。
そこで、平山の正社員で構成された請負チームを投入し、あわせてコンサルタントによる生産性向上の指導を実施しました。出来高請負の導入により生産量の変動に応じた労働力の調整が可能となり、余剰な人件費・労務費の大幅な削減を実現しました。
製造請負・業務委託を適切に活用するためには、契約内容の整備と委託先の選定が重要です。ここでは、トラブルを防ぎながら外部リソースを最大限に活かすためのポイントを解説します。
製造請負・業務委託のいずれの契約においても、トラブルを防ぐためには契約書の内容を具体的に定めることが不可欠です。
契約締結時には、以下の3つの注意点を押さえておきましょう。
業務範囲を具体的に定める
業務範囲が曖昧なままだと、稼働後に追加請求や対応拒否などのトラブルにつながります。役割分担や責任の所在などについて、事前にすり合わせを徹底してください。
報酬条件・支払い方法を明確にする
金額だけでなく、支払い時期・手段・追加作業が発生した際のルールも契約書に定めましょう。仕様変更や追加業務が生じた場合の費用の算出基準も整理しておくと安心です。
指揮命令系統を整理・周知する
請負や業務委託契約において、発注側が外部スタッフへ直接指示を出すと偽装請負とみなされるリスクがあります。受託側の現場責任者を書面に明記し、業務に関する連絡はその責任者のみを通す体制を構築しましょう。自社の社員に対しても「直接指示をすると法律違反になりうる」と周知することが必要です。
製造請負契約書の書き方や、作成時の注意点はこちらの記事をご参照ください。
委託する事業者を選ぶ際は、コンプライアンス管理体制が整っているかどうかの確認も不可欠です。偽装請負などの問題が発覚した場合、委託した発注企業も責任を問われ、社会的信用を大きく失うリスクがあります。
製造請負を活用する際は、請負事業者の質をいかに担保するかが重要なポイントとなります。「製造請負優良適正事業者認定制度(GJ認定制度)」で「優良適正事業者」の認定を受けた事業者に委託すれば、一定水準以上の技術・技能を持つ請負労働者に業務を任せることができます。
製造請負優良適正事業者について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
製造請負や業務委託いずれの契約を選ぶ場合も、指揮命令の所在を明確にし、契約書に必要な事項を具体的に明記することが偽装請負リスクの回避につながります。
平山はGJ認定制度の優良適正事業者として認定を受けた製造請負会社です。「実技研修」「ソロフライト研修」「請負現場レベルアップ研修」の3部門による人材育成や、業務開始前の現場診断・専任チームの編成など、入念な準備体制が強みです。質の高い製造請負サービスをお探しの方は、ぜひお気軽に平山にご相談ください。