少子高齢化が進む日本では、製造業・介護・運送業など幅広い職種で人手不足が深刻化しています。こうした背景のもと、一定の日本語能力と技能を持つ外国人材を受け入れるために設けられたのが「特定技能制度」です。
本記事では、特定技能1号・2号の対象職種一覧と分野別の業務内容について、最新情報をもとに分かりやすく解説します。特定技能外国人の受け入れを検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
特定技能制度とは、人材を確保することが困難な産業(特定産業分野)において、一定の専門性・技能を有する即戦力として働く外国人材を受け入れるための在留資格です。
企業が外国人材を直接雇用(一部分野では派遣も可)できることが特徴で、在留資格は以下の2区分に分かれます。
特定技能制度についての詳細は、こちらの関連記事もご覧ください。
2025年現在、特定技能1号で受け入れ可能な職種(特定産業分野)は全16分野、2号は介護・自動車運送業・鉄道・林業・木材産業を除く11分野に拡大しています。
以下は、管轄省庁と主な業務内容をまとめた一覧表です。
※介護分野は、在留資格「介護」があることから、特定技能2号の対象ではありません。そのため、特定技能制度を使って就労できるのは最長で通算5年間となります。なお、特定技能1号から、長期就労可能な在留資格「介護」に切り替えるには、介護福祉士の資格が必要です。
これまで、特定技能2号の対象分野は「建設」「造船・舶用工業」の2分野のみでしたが、2023年に新たに9分野が追加され、合計11分野となりました。
また、2024年に追加された「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」については、1号特定技能外国人のみ受け入れ可能としていますが、将来2号へ拡大する可能性もあります。
さらに政府は、日本の労働力不足の実態を踏まえ、特定技能1号・2号双方での新たな分野の追加も検討しています。特定技能制度は即戦力となる外国人材の確保につながることから、今後も企業が中長期的な人材戦略を立てる上で、注目していきたい制度といえるでしょう。
特定技能制度では、分野ごとに従事できる職種や業務内容が詳細に定められています。そのため、企業が特定技能制度を活用する際は、まず自社の事業が特定産業分野に該当するかを確認しましょう。
以下では、出入国在留管理庁が公表する最新情報をもとに、分野別の業務範囲と特定技能外国人が働ける場所を紹介します。
※業務内容や試験情報の詳細は、分野所管省庁の最新告示をご確認ください。
高齢者、障がい者の身体介護、生活援助など日常生活のサポート
身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)、訪問介護サービス※
※令和7年4月より、特定技能外国人および技能実習生が一定の条件のもと、訪問サービスに従事することが可能になりました。
特別養護老人ホーム、訪問介護事業所、デイサービスセンター等
オフィスや商業施設など、住宅以外の建物の清掃・整備
商業施設、オフィス、ホテル等
1. 機械金属加工
金属・プラスチック素材の成形・加工・検査業務
2. 電気電子機器組立て
電子回路・プリント基板の組立て及び各種デバイスの製造業務
3. 金属表面処理
金属製品へのめっき・陽極酸化などの表面処理業務
4. 紙器・段ボール箱製造
紙器・段ボール箱の印刷・加工・組立て製造業務
5. コンクリート製品製造
建設用コンクリート製品の型枠組立・配筋・打設・養生業務
6. RPF製造
廃プラスチック・古紙からの固形燃料(RPF)製造業務
7. 陶磁器製品製造
食器・置物などの陶磁器製品の成形・焼成・仕上げ業務
8. 印刷・製本
書籍・雑誌・パッケージ等の印刷及び製本業務
9. 紡織製品製造
糸の紡績・織布・染色・ニット編立て等の繊維製造業務
10. 縫製
服飾品・寝具等のミシン縫製及び仕上げ業務
金属加工工場、機械製造工場、電子部品工場、自動車部品メーカー等
1. 土木
土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業
2. 建築
建築物の新築、増・改築、移転、修繕等に係る作業
3. ライフライン・設備
電気通信、ガス、水道、電気その他の整備・設置、変更、修理に係る作業
建設会社、工務店、設備工事会社等
1.
造船
船舶の組立、溶接、塗装、配管作業
2.
舶用機械
船舶のエンジンや駆動装置、排気設備などの製造・組立
3.
舶用電気電子機器
船舶用電気機器や制御装置、通信システムなどの製造・組立
造船所、船舶修繕工場、舶用機器メーカー等
自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する基礎的な業務
• 日常・定期点検、車検整備
• エンジン・ブレーキ等の分解整備
• タイヤ交換、オイル交換・消耗品交換
自動車整備工場、ディーラー、カー用品店、運送会社の整備部門等
1.
空港グランドハンドリング
航空機の地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等
2.
航空機整備
航空機の機体や装備品の整備業務
航空会社、空港管理会社、航空機整備会社、航空貨物会社等
宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供
• チェックイン・チェックアウト手続き
• キャンペーン企画立案
• 情報発信
• レストランでの配膳業務
ホテル、旅館等
1.
耕種農業全般
栽培管理、農産物の集出荷・選別等
2.
畜産農業全般
牛・豚・鶏などの畜産物の飼養管理、畜産物の集出荷・選別等
農業法人、農協、農産物生産施設、畜産農家等
1.
漁業
漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等の業務
2.
養殖業
養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲(穫)・ 処理、安全衛生の確保等の業務
漁業協同組合、漁業会社、養殖業者、水産加工会社等
飲食料品製造業全般
• 飲食料品(酒類を除く)の製造・加工
• 安全衛生管理・品質チェック
食品工場、スーパーマーケット(食品製造部門)、製パン工場、食肉加工場等
外食業全般、飲食物の調理や接客、店舗管理
レストラン、ファストフード店、居酒屋等
トラック、バス、タクシーでの貨物・旅客の運送及び運行管理業務
運送会社、物流センター、タクシー会社、宅配業者等
自動車運送業分野に従事するには、日本の運転免許取得が必須です。自動車運送業のうち、バス・タクシー運転者に対しては日本語能力試験(N3以上)の合格が求められます。
鉄道車両の運転・整備、線路・駅施設の保守管理業務
1.
軌道整備
軌道(線路)の保守・点検
2.
電気設備整備
電気設備の保守・点検
3.
車両整備
鉄道車両の点検・整備作業
4.
車両製造
鉄道車両の製造
5.
運輸係員
旅客案内・誘導業務
鉄道会社、鉄道車両整備会社、軌道工事会社等
鉄道業のうち、運輸係員の業務を行う場合は日本語能力試験(N3以上)の合格が求められます。
森林での伐採、搬出、植林、保育などの森林整備作業
森林組合、林業会社、造林業者等
製材業、合板製造業等に係る木材の加工等
製材所、木材加工工場、合板工場、集成材メーカー等
ここでは、特定技能外国人を受け入れる企業が押さえておくべき「職種ごとの受け入れ要件」と「特定技能1号の申請手続きの流れ」について解説します。
特定技能制度では、人材を受け入れる企業にも一定の要件が課されています。
まず、事業内容が特定産業分野のいずれかに該当していることが前提ですが、加えて、分野ごとに定められた許認可や登録要件を満たす必要があります。
特定技能外国人を受け入れる企業は、分野ごとに設置されている協議会に加入し、必要な協力を行う義務があります。
例えば、工業製品製造業分野では「一般社団法人工業製品製造技能人材機構=JAIM」、飲食料品製造業では「食品産業特定技能協議会」への加入が求められています。
建設分野では、報酬予定額や技能習得計画などを記載した「1号特定技能外国人受入報告書」を国土交通省にオンラインで提出する必要があります。また、海外からの新規入国者は、「建設キャリアアップシステム」への登録も義務付けられています。
特定技能1号のビザ申請は、日本国内在留者と海外在留者では必要な手続きが異なります。
ここでは、企業が外国人から採用申し込みや求職あっせんを受け、特定技能の申請手続きを行う場合の一般的な流れを紹介します。
なお、出身国によっては、独自の手続きが必要なケースもあります。詳細は、出入国在留管理庁の「特定技能に関する各国別情報」を確認してください。
特定技能制度では、技能実習制度を修了した人材が多数活躍しています。技能実習制度の基本を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
特定技能制度は、分野や業務範囲が細かく定められているため、「自社の職種が対象かどうか分からない」「どこまでの業務を任せられるのか不安」といった声も少なくありません。
ここでは、企業からよく寄せられる質問をQ&A形式で整理しました。
特定技能制度では、現在16の分野で外国人材の受け入れが認められています。 まずは、自社の業務内容がこれらの特定産業分野の定義に該当するかを確認することが第一歩です。不明点がある場合は、地方出入国在留管理官署に問い合わせることをおすすめします。
特定技能の在留資格を持つ外国人に「単純作業のみ」を行わせることは認められていません。 ただし、主たる業務に付随する「関連業務」であれば、同じ職種の日本人従業員と同様に従事することができます。
はい。特定技能2号の外国人材は、現場作業に加えてマネジメント・後進指導・工程管理など、指導的な業務を担うことが想定されています。そのため、特定技能1号と同じ業務内容を継続して行わせるのは不適切です。2号へ移行した際には、技能レベルの向上に見合った職務内容への見直しが求められます。
特定技能制度は、慢性的な人手不足に悩む企業にとって、即戦力となる外国人材を確保できる有効な手段です。 2025年現在、特定技能1号は16分野、2号は11分野の職種が対象となっていますが、今後さらに拡大が予定されています。
特定技能制度の活用を検討されている企業は、技能実習・特定技能外国人に対する豊富な支援実績を持つ株式会社平山グローバルサポーターのサイトをご覧ください。