技能実習制度は、外国人を日本に受け入れ、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。
本記事では、技能実習制度の基本的な仕組みから、受入れ可能な職種一覧、そして技能実習制度に代わる新制度「育成就労制度」の概要まで、網羅的に解説します。
外国人技能実習制度は、開発途上国などの外国人を日本企業が受け入れ、OJTを通じて技術や知識の移転を行う目的で運用されている制度です。この制度は、1960年代後半から海外現地法人などで行われていた研修制度をもとに、1993年に創設されました。
現在も、国内の多くの企業で海外からの実習生受入れが進んでおり、令和6年6月末時点で約42万人の外国人が技能実習生として日本に在留しています。
この制度の目的は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」第一条で以下のように定められています。
「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする。」
すなわち、技能実習制度は原則として国際協力のための人材育成であり、国内の労働力確保を目的とした制度ではありません。一方で、慢性的な人手不足を背景に、実際は不足した労働力を補うために制度を活用している企業も少なくありません。
技能実習生は、技能の習得段階に応じて「1号・2号・3号」に区分されており、それぞれ在留できる期間と要件が定められています。
1号(1年間)を修了後、2号(2年間)、さらに3号(2年間)へと段階的に移行し、最長5年間の受入れが可能です。ただし、3号の実習を行うことができるのは、優良※と認定された実習実施者・監理団体に限られます。
各号へ進むには職種・作業ごとに設定された「技能検定」に合格する必要があります。技能検定は学科試験と実技試験で構成され、段階的に技能習得のレベルを確認する仕組みになっています。
実習生本人の希望による転籍(受入企業の変更)は原則として認められていません。これは、計画に基づく技能習得を確実にするための規則です。
ただし、労基法違反や倒産など受入企業側に問題があった場合や、実習生自身の怪我や病気、妊娠などやむを得ない事情がある場合には、例外的に転籍や一時帰国が認められます。
技能実習制度は、送出機関、受入企業、監理団体、外国人技能実習機構、地方出入国在留管理局が連携して運営されています。
外国人を受け入れ、計画に沿った実習を実施。技能習得に専念できる環境を整備する義務を負う。
外国人技能実習機構の許可を受けた非営利団体で、受入企業を指導・監理する。実習生の受入れや配属、計画確認、定期巡回、相談対応を行う。
技能実習生を海外で募集・選考し、日本での実習に備えた事前教育を実施する。
制度全体の監督・指導、相談支援、技能実習計画の認定を担う。
在留資格や在留カードの申請など外国人の在留管理を担う。
技能実習生の受け入れ方は、大きく分けて企業単独型と団体監理型の2つあります。
企業単独型 日本の企業が単独で海外の現地法人や取引先企業の職員から外国人を受け入れ、企業内で技能実習を行う。
団体監理型
監理団体が外国人を受け入れ、その団体の加盟企業などで実習を実施する
2023年末のデータでは、企業単独型が1.7%、団体監理型が98.3%と、ほとんどの受入企業が団体監理型を利用しています。
ここでは、団体監理型の受入れ申し込みから実習開始までの流れについて、簡単に解説します。
1. 監理団体への申し込み
・外国人技能実習機構の認可を受けた監理団体に技能実習生の受入れを申し込む
2. 雇用契約の締結
・受入企業と技能実習生が雇用契約を締結
3. 受入企業が実習計画の作成・申請
・技能実習計画を作成する
・技能実習計画を外国人技能実習機構(OTIT)へ申請
・計画の認定・交付を受ける
4. 在留資格認定証明書の取得
・監理団体が地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付を申請
・交付を受ける
1. 送出機関への応募
・技能実習希望者が送出国の送出機関に応募
2. 募集・選抜
・監理団体と契約した送出機関が実習生を募集・選抜
3. 入国前講習の受講
・選抜された実習生が送出国で入国前講習を受講
・日本語や日本の生活習慣などを学習
4. 来日後の入国後講習
・来日後、約1か月間の入国後講習を受講
・より実践的な日本語や技能実習に関する知識を習得
5. 実習開始
・受入企業で技能実習を開始
申し込みから実習開始までは、通常6か月~10か月程度かかるとされています。そのため、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。
1年間に受入れ可能な技能実習生の人数は、受入企業の常勤職員数によって決まっています。2年目以降は、同じ人数を新たに受け入れることが可能です。
技能実習を良好に修了すれば、「特定技能」1号への移行が可能です。
移行条件は以下の通りです。
1.技能実習2号を良好に修了していること
2.技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の業務に関連性があること
この仕組みにより、技能実習で培った実務経験を活かした長期的な就労が可能になります。
特定技能制度の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
技能実習生を受け入れ可能な職種は随時追加されており、令和7年3月7日時点で91職種168作業あります。
ここからは、最新情報をもとに技能実習制度の移行対象職種・作業一覧をご紹介します。
日本で技能実習制度の活用が拡大するにつれて、いくつかの問題が浮上しています。
主に指摘されている問題は以下の通りです。
制度の目的と実態のずれ
転籍の扱い
監理・支援体制の不十分さ
実習生の日本語能力の不足 など
こうした現状を受けて、政府は制度の見直しを進めています。
特に問題とされているのは、原則として転籍が認められていないことを前提とした「技能実習生の失踪」です。
原因には、受入企業でのハラスメントや低賃金のほか、入国時にブローカーから高額な仲介料を請求され、返済に追われる中でSNS等の不確かな情報に基づき、高賃金の職場に移ってしまうケースなども含まれます。
しかし、失踪が多い送出機関への受入れ停止措置や二国間取決めによる送出しの適正化などの対策が功を奏し、令和6年における技能実習生の失踪者数は6,510人となり、過去最多だった令和5年から約33%減少するなど改善が見られています。
このような制度の見直しにより、制度の透明性と実習生の保護が徐々に強化されています。
技能実習制度は、2027年4月1日の育成就労法施行をもって「育成就労制度」へと移行します。
2024年6月、技能実習制度に代わる育成就労制度を新設するための関連法改正が成立しました。「技能実習法」は「育成就労法」へ改められ、技能実習制度は廃止されることが決定しています。
技能実習制度では、制度の目的と運用実態のずれが指摘されていました。この課題を是正し、特定技能への移行を円滑にするために新設されたのが「育成就労制度」です。
以下に、技能実習制度と育成就労制度の違いを簡単にまとめます。
育成就労制度に関わる特定技能の職種一覧については、こちらの記事をご参照ください。
技能実習制度を活用する際は、制度の目的や在留資格の条件、監理団体の選び方など、企業として押さえておくべきポイントがいくつかあります。
ここでは、注意すべき事項をQ&A形式でまとめました。制度の理解を深め、適正な受入れに役立ててください。
技能実習制度にあった「企業単独型」と「団体監理型」の2つの受入れ形態は、育成就労制度でも同じですか?
育成就労制度では、技能実習制度の2つの形態を引き継ぎ、以下の2つの区分が設けられます。
外国の支店や子会社の社員など、企業が自社の職員を受け入れる形態です。技能実習の「企業単独型」にあたります。受け入れ形態は引き継がれますが、単独型では受け入れられる外国人の範囲(要件)に違いがあるので、注意が必要です。
監理支援機関(現行の監理団体にあたる組織)が関与し、受入れ企業を支援・監督する形態です。技能実習の「団体監理型」にあたります。
技能実習生はいつまで受入れ可能ですか?そのまま育成就労制度へ移行できますか?
技能実習制度は改正され、育成就労制度へ移行します。現在受け入れている技能実習生については、施行時点で在留している場合は、一定の範囲内で技能実習を継続できます。
また、育成就労法の施行日は令和9(2027)年4月1日に決定しています。 引き続き育成就労制度での外国人の受入れを行うには、特定技能制度の「特定産業分野」と原則一致する「育成就労産業分野」として設定されている必要があります。
監理団体の選び方を教えてください。
信頼できる監理団体を選ぶためには、以下のポイントを確認してください。
制度・法律を正しく理解・遵守しているか
監理費用の中身が明確で適正か
実習生への日本語教育体制が整っているか
各種手続き・サポートサービスがスムーズか
実習生の出身国言語に堪能な職員がいるか
定期的な訪問指導を行い、実習生一人ひとりに丁寧なフォローがあるか
技能実習制度をはじめとした外国人材の活用については、頻繁な法改正による制度の複雑さに対する専門知識や、生活上のサポートなどの細やかな対応が必須です。
株式会社平山グローバルサポーターは、技能実習生や特定技能人材の受入れ支援をはじめとした外国人材活用の豊富な経験を持っています。技能実習生の3年期間満了定着率は99.5%。コンプライアンス厳守を徹底し、多くの企業の円滑な制度活用をサポートしています。
外国人材の活用を検討中の方、受入れに関する疑問や不安をお持ちの方は、ぜひ平山グローバルサポーターの公式サイトをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。