交替勤務や突発的な残業が発生する製造現場では、従業員の休息時間を確保しながら、生産ラインの稼働を維持することが課題です。
勤務間インターバル制度は、勤務終了から次の勤務開始までに一定の休息時間を確保する仕組みです。2019年から導入が努力義務となっていますが、2026年10月時点で一律の義務化時期は決まっていません。
本記事では、制度の基本や国内の導入状況を整理し、製造現場で休息時間の確保と生産性の維持を両立するための改善策を解説します。
制度の意味から義務化の動向、国内の導入状況まで、よくある疑問をQ&A形式で解説します。
勤務間インターバル制度とは、勤務終了から翌日の勤務開始までに、一定時間以上の休息時間を設ける制度です。長時間労働による疲労の蓄積を防ぎ、従業員が十分な休息を取れるようにすることを目的としています。
例えば、休息時間を11時間と設定した場合、23時に残業を終えた従業員は、翌10時以降に勤務を開始することになります。通常の始業時刻が8時なら、始業を繰り下げて対応します。
2026年10月時点で、勤務間インターバル制度の一律の義務化時期は決まっていません。
日本では、働き方改革関連法による「労働時間等設定改善法」の改正により、2019年4月1日から制度の導入が事業主の努力義務となりました。
努力義務とは、企業に取り組む努力が求められるものであり、一般企業では制度を導入していないこと自体に罰則はありません。
ただし、労働政策審議会では義務化を含む制度の見直しについて議論が続いています。今後の法改正の動向を把握しながら、休息時間を確保できる体制を整えておくことが重要です。
現行制度では、一般企業に対して一律に11時間の休息時間を確保することは義務付けられていません。
11時間という基準は、EUの労働時間指令で原則として定められている休息時間であり、日本でも制度導入の参考とされています。
企業は睡眠・通勤時間や交替勤務の状況を踏まえ、実際に休息を取れる勤務体制を整えることが大切です。
厚生労働省の「令和7(2025)年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度を導入している企業の割合は6.9%です。前年の5.7%から増加したものの、導入率は依然として1割未満にとどまっています。
一方、「導入を予定または検討している」企業は13.8%、「導入予定はなく、検討もしていない」企業は78.7%でした。
※調査対象は、全国の常用労働者30人以上の民営企業です。
制度を導入していなくても、十分な勤務間隔を確保できている企業はあります。一方、交替勤務や突発的な残業がある製造現場では、休息時間の継続的な確保が課題です。
製造現場では、設備の稼働や生産計画に合わせて勤務時間を組むため、交替勤務や突発的な残業によって休息時間の確保が難しくなる場合があります。
例えば、24時間稼働の工場では、2交替・3交替制などを採用するケースがあります。遅番から早番への切り替えなど、シフトの組み方によっては、勤務終了から次の勤務開始までの時間が短くなることがあります。
また、設備トラブルや急な増産、納期変更などによって、予定外の残業が発生するケースもあります。例えば、設備の復旧作業が長引いて退勤時刻が遅れた場合、翌日の始業時刻を調整しなければ、十分な休息時間を確保できません。
予定したシフトと実際の勤務時間のずれも、制度運用を難しくします。
休息時間を確保するために勤務時間を調整しようとしても、交代要員が不足していれば、生産ラインの稼働を維持することは容易ではありません。
設備操作や品質検査を特定の熟練者だけが担当する現場では、その従業員の勤務調整が難しくなります。ある従業員の始業を遅らせると、ほかの従業員に負担が集中する場合もあります。
勤務間インターバル制度を無理なく運用するには、シフト調整だけでなく、人員配置や業務分担の見直しも必要です。
勤務間の休息が不足すると、疲労の回復を妨げ、作業の安全性や品質にも影響するおそれがあります。機械操作や製品検査など、正確な判断が求められる製造現場全体の課題です。
勤務終了後には通勤や食事、家事の時間も必要なため、勤務間隔が短いと睡眠時間を確保しにくくなります。睡眠不足が続くと、注意力や判断力が低下し、確認漏れや操作ミスが起こりやすくなる可能性があります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠不足と作業効率の低下や事故との関連が示されています。交替制勤務についても、睡眠の不調や勤務中の事故・けがとの関連が報告されています。
例えば、設備の操作手順を誤ったり、危険箇所の確認が不十分になったりすると、労働災害につながるおそれがあります。
製品検査で不具合を見落とせば、不良品の流出や再検査、手直しなどが発生し、生産計画に影響する可能性もあります。
こうしたリスクを個人の注意力だけで防ごうとするのには限界があります。安全と品質を守りながら安定稼働を続けるには、従業員が十分に休める勤務体制を整えることが重要です。
勤務間インターバル制度の導入では、休息時間の確保と稼働率の維持を両立する工夫が必要です。勤務時間だけでなく、生産計画や人員配置、作業方法も見直す4つの手法を紹介します。
勤怠記録から従業員ごとの実際の終業時刻と翌日の始業時刻を照合し、勤務間隔を確認します。曜日・シフト別に整理し、休息不足が集中する工程や時間帯を見つけます。
現場管理者にも聞き取り、設備復旧の遅れや引き継ぎの長期化、生産量の偏りなど、原因を特定します。
勤怠システムに、休息時間の不足を知らせるアラート機能を設けることも有効です。
人事・労務部門と製造部門が連携し、勤務体制を調整します。
例えば、突発的な残業が発生した翌日は始業時刻を繰り下げ、ほかの従業員が業務を引き継げる仕組みを整えます。また、繁忙期に残業が集中しやすい工場では、生産量の見通しを早めに共有し、応援人員の確保や工程別の稼働計画を事前に検討することが重要です。
勤務時間の短縮だけでは負担が偏るため、生産計画と人員配置を一体で見直すことが欠かせません。
業務が属人化した現場では、シフトを調整しても代替要員を確保できません。
作業手順書の整備と多能工化によって、複数の従業員が同じ工程を担当できる体制を目指します。
また、スキルマップを活用して従業員ごとの技能や習熟度を可視化すれば、どの工程から教育を進めるべきか判断しやすくなります。すべての従業員を一度に多能工化するのではなく、欠員時に生産が滞りやすい工程から計画的に育成を進めることが大切です。
具体的な進め方は、以下の記事も参考にしてください。
改善を進めても、自社の人員だけでは休息確保と生産能力の維持が難しい場合があります。
その際は、製造請負などの外部リソースを活用し、一部の製造工程を委託することも選択肢のひとつです。自社従業員の業務負担や人員配置を見直すことで、無理のない勤務体制づくりにつなげられます。
ただし、委託に当たっては業務範囲や生産計画、双方の役割分担を明確にし、安定稼働できる体制を整える必要があります。
休息時間の確保は、従業員の健康だけでなく、人材の確保・定着にも役立ちます。
夜勤や交替勤務のある製造現場では、求職者が入社後の生活リズムをイメージできる情報が重要です。
求人票や採用サイトでは、勤務間インターバル制度の導入状況に加え、実際のシフト例や休息時間の確保方法、残業後の始業時刻の調整ルールなどを具体的に示すとよいでしょう。
実際の運用に沿った情報を伝えることで、求職者の不安を軽減し、入社後のミスマッチを防ぐことが期待できます。
制度を導入しても、繁忙期などに休息時間を確保できなければ、従業員の負担は改善されません。管理者は制度の運用状況を定期的に確認し、休息時間の不足が繰り返される場合には、従業員の意見も踏まえて改善することが重要です。
こうした取り組みを継続し、安心して働ける環境を整えることが、従業員の定着にもつながります。
製造業における働き方改革の具体的な取り組みについては、以下の記事も参考にしてください。
勤務間インターバル制度は、2026年10月時点で一般企業への導入が努力義務とされています。しかし、義務化の有無にかかわらず、従業員が十分な休息を取れる環境づくりは、製造現場の安全や品質を守るうえで重要です。
休息時間の確保と稼働率の維持を両立するには、シフト調整だけでなく、業務の標準化や多能工化、人員配置の見直しを進めることが欠かせません。一方、人員不足や業務の属人化が進む現場では、自社だけで対応しきれない場合もあります。
株式会社平山では、製造請負事業(インソーシング事業)を通じて、専属の請負チームによる製造支援を提供しています。また、現場改善コンサルティング部門と連携し、作業の標準化や効率化にも取り組んでいます。
従業員の休息を確保しながら安定した生産体制を構築するために、ぜひ一度平山へお気軽にご相談ください。