技能実習・特定技能・育成就労の最大の違いは、制度の目的と、外国人材が日本でどのようなキャリアを描けるかという点にあります。
技能実習制度では、外国人は「実習生」として位置づけられ、長期的なキャリアが築きにくいという課題がありました。この技能実習制度に代わり施行される育成就労制度では、制度修了後は特定技能1号への移行が想定されています。 さらに、特定技能に移行すれば、即戦力人材として日本での就労を継続でき、分野によっては最長5年、特定技能2号では在留期間の上限なく働くことも可能です。
3つの制度の目的を整理すると
技能実習は一時的な技能習得
育成就労は人材育成と定着
特定技能は即戦力としての長期就労
と明確な違いがあります。
今後は、これらの制度を通じて、外国人材が段階的にキャリアアップできる仕組みへと移行していくことになります。以下では、それぞれの制度について概要を整理して解説します。
1993年に始まった技能実習制度は、開発途上国等の人材に日本の技能を移転し、母国の経済発展に寄与することを目的としています。そのため、制度上は外国人を「労働者」ではなく「実習生」と位置づけており、実習生を労働力として活用している実態との乖離が指摘されてきました。
また、技能実習では、同一職種・同一受け入れ企業のもとでの就労が前提とされており、原則として本人意向による転籍(転職)は認められていません。こうした仕組みは、外国人に対する人権侵害の問題を生み出していると、強い批判を受けてきました。
これを受けて、技能実習制度は2027年に廃止が決まり、新たに育成就労制度が創設されることになりました。
技能実習制度についてはこちらの記事に詳しくまとめています。
2027年より施行される育成就労制度は、日本国内で外国人材を計画的に育成し、人手不足分野へ定着させることを目的とした新制度です。
育成就労では、原則3年間の就労を通して、特定技能1号水準の技能と日本語能力を身につけることが求められます。一定の要件を満たした場合には転職も認められ、監理支援体制や日本語教育の強化など、労働者保護が強化されている点が特徴です。
育成就労制度は、技能実習で指摘されてきた課題を正しながら、特定技能への円滑な移行を前提とした育成型の在留資格として運用される方針です。
育成就労制度についてはこちらの記事に詳しくまとめています。
2019年より運用されている特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野において、即戦力として働く外国人材を受け入れるための在留資格です。一定の技能水準と日本語能力を有することが要件とされており、採用時点で業務に従事できる即戦力人材であることが前提となっています。
特定技能1号では、介護、建設、製造業などの16分野(2026年1月時点)で就労が可能です。さらに、より高度な技能が求められる特定技能2号へ移行すれば、在留期間の更新回数に制限がなくなり、家族帯同も認められるなど、安定した長期就労が可能となります。
特定技能制度は、育成就労を修了した人材や試験に合格した外国人材が、日本で長期的に働くためのゴールとなる制度であり、今後の外国人雇用の中心を担う在留資格といえます。
特定技能制度についてはこちらの記事に詳しくまとめています。
技能実習制度、特定技能制度、育成就労制度の主な違いを比較表にまとめました。
※育成就労制度の詳細な要件は、今後の政省令・告示により確定予定です。
ここでは、企業実務で特に影響が大きい6つの違いについて、技能実習・育成就労・特定技能を比較・解説します。
技能実習制度は91職種168作業という区分が設定され、技能実習計画で認められた作業以外は基本的に従事できません。
一方、育成就労は「育成就労産業分野」という分野単位で業務が整理されることになります。特定技能も同様に「特定産業分野」(16分野・2026年1月時点)が設定され、分野ごとに業務範囲が定められています。
このため、技能実習で認められていた作業が、育成就労や特定技能では対象外となるケースもあり、技能実習を活用していた企業が育成就労制度の対象外となることもあります。
技能実習は原則最長5年で制度終了となりますが、育成就労は原則3年間で特定技能への移行を目指します。3年経過後に特定技能の試験に不合格となった場合でも、一定条件下で最長1年の在留延長が認められる点が特徴です。
これに対し、特定技能は長期就労を前提とした制度で、1号は通算5年、2号に至っては在留期間の更新回数に上限がないのが特徴です。
技能実習では原則として転籍は認められていませんが、特定技能では同一分野内での転職が可能です。
また、育成就労の転籍には、以下の要件が設定される方針です。
1~2年の転籍制限期間(転籍前の機関で育成就労を行う期間)を満たす
N5以上の日本語能力試験と技能検定基礎級に合格
人権の保護と特定技能への円滑な移行を前提とした制度のため、技能実習より柔軟に転職が可能になることが想定されています。
技能実習制度では、原則として入国時に日本語能力試験や技能試験は求められません。ただし例外として、介護職種に限り、日本語能力試験N4相当以上の日本語能力が要件とされています。
育成就労制度についても、現時点では入国時点で高度な日本語能力や実務経験は求められません。一方で、円滑な就労と育成を目的に、日本語能力は原則N5相当以上を求める方向で検討されています。
一方、特定技能は技能試験と日本語能力試験の合格が要件となります。これは、特定技能制度自体が即戦力人材の受け入れを目的としているためです。
技能実習と育成就労では、いずれも受け入れ企業の常勤職員数に応じた人数枠が設けられています。一方、特定技能は企業単位での人数上限は設けられていませんが、分野ごとに国としての受け入れ人数の目安が設定されています。
育成就労制度ではこれに加え、産業分野ごとの受け入れ見込数を設定する方針が示されています。また、育成就労外国人が地方から都市圏へ流出することを防ぐ観点から、所定の「指定区域」において、優良な育成就労実施者が優良な監理支援機関の監理支援を受ける場合には、受け入れ人数枠の拡大が認められます。
なお、経過措置として、育成就労制度の施行後も引き続き技能実習を行っている1号・2号技能実習生については、育成就労外国人として受け入れ人数枠に含まれる点に注意が必要です。
技能実習では原則家族帯同は認められておらず、育成就労も現時点では家族帯同は不可となる方針です。
外国人材の家族帯同が明確に認められているのは特定技能2号のみで、長期就労と生活基盤の安定を想定した在留資格となっています。
企業が選ぶべき外国人受入れ制度は、いつ・どのレベルの人材を・どれくらいの期間確保したいかで決まります。
ここでは、企業側の判断ポイントを解説します。
現場で段階的に教育できる体制があり、長期的な労働力確保を目指す場合は、育成就労が適しています。例えば、製造業や農業、漁業などの分野が当てはまります。
3年間で基礎的な技能と日本語力を伸ばし、特定技能制度へと移行させることで、安定した長期雇用につなげやすくなります。
教育コストをかけられない、またはすぐに稼働できる人材が必要な場合は、特定技能が最適です。例えば、外食、介護、建設などの現場などが当てはまります。
技能試験・日本語試験をクリアした人材を直接雇用でき、転職も制度上認められています。
技能実習は廃止が決定しており、今後は育成就労または特定技能への転換を前提に、受け入れ体制を再検討する必要があります。
また、自社の業務が技能実習制度の対象分野・職種だったとしても、育成就労制度・特定技能制度の対象分野に該当しないケースも発生します。
引き続き外国人材の活用を考えている場合は、まず自社業務が「育成就労産業分野」または「特定産業分野」に該当するかを確認しましょう。
今後、受入れ企業が外国人材を活用する際の判断ポイントとしては、
人材を育てて定着させたいなら 育成就労制度
すぐ働ける人材が欲しいなら 特定技能制度
という選択が合理的です。
外国人雇用は単なる人手不足対策ではなく、採用や教育、定着を含めて戦略的に制度を選ぶことが、今後ますます重要になります。
技能実習制度は廃止され、2027年4月1日より育成就労制度へ完全移行します。また、同年には特定技能制度の産業分野の追加など制度内容の変更もあります。
今後の外国人材受入れ制度変更に伴う注意点と見通しについて、最新情報から解説します。
現在受け入れている技能実習生については、
1. 育成就労法施行時点(令和9年4月1日)で在留している場合
2. 同日までに技能実習計画の認定が申請され、令和9年6月30日までに技能実習を開始する場合
においては、技能実習を継続可能とされています。
つまり、育成就労制度施行と同時に技能実習が一斉終了になるわけではありませんが、新規の技能実習生受け入れは将来的にできなくなる前提で考えておく必要があります。
政府は、2027年に向けて特定技能制度の対象となる「特定産業分野」を全19分野に拡大する予定です。
追加が予定されている業種は、以下3分野です。
これにより、これまで制度対象外だった産業でも、特定技能外国人の受け入れが可能となります。
育成就労制度の対象となる「育成就労産業分野」は、現時点で全17分野が想定されています。
これは、2027年時点の特定産業分野(全19分野)から、航空分野および自動車運送業分野を除いたものです。
なお、こちらの情報は、日本国内の人手不足の状況等の変化を踏まえ、今後追加・見直しが行われる可能性があります。最新情報については、出入国在留管理庁の公式発表を確認するようにしてください。
技能実習・育成就労・特定技能は、いずれも外国人材受け入れ制度ですが、目的や役割は大きな違いがあります。制度は複雑で変更も多いため、外国人雇用に精通した信頼できる専門機関に相談することが、結果的にリスクを抑えることにつながります。
平山グローバルサポーターは、技能実習・特定技能外国人材の紹介および受け入れ支援を行ってきた実績があり、制度理解から実務対応まで一貫したサポートを提供しています。
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