技能実習制度は廃止され、2027年4月1日から新たに「育成就労制度」へ移行することが決定しています。なお、制度移行にあたっては3年間の移行期間が設けられるため、技能実習制度は2030年までに廃止予定となっています。
本記事では、技能実習廃止後の新制度である「育成就労制度」について、制度の概要や導入の背景、新制度によって何が変わるのかを中心に解説します。外国人材の受け入れを検討している企業担当者や、制度の全体像を把握したい方はぜひ参考にしてください。
技能実習制度は、2027年4月1日の育成就労法施行をもって「育成就労制度」へと移行します。
外国人技能実習制度は、開発途上国などから外国人を受け入れ、日本の技術や技能を移転し、人材育成を通じて国際貢献を行うことを目的として運用されてきました。受け入れ人数は年々増加しており、令和6年時点で約46万人の外国人が技能実習生として日本に在留しています。
技能実習制度について、詳しい情報はこちらの記事もご参照ください。
技能実習制度が廃止される最大の理由は、制度の目的と実態が大きくずれているためです。本来、技能実習制度は「国際協力」を目的とした制度ですが、実際の運用では、日本国内の人手不足を補う労働力として技能実習生が活用されているケースが多く見られました。
中でも深刻な問題として挙げられたのが、技能実習生の失踪問題です。法務省出入国在留管理庁のデータによると、技能実習生の受け入れ人数の増加に伴い失踪者数も増加し、令和5年(2023年)には9,753人と過去最多を記録しました。現在は防止策の実施により減少傾向にあるものの、制度そのものの構造的な問題が浮き彫りになりました。
技能実習生が失踪に至る背景には、受け入れ企業でのハラスメントや人権侵害、違法な低賃金・長時間労働といった不当な待遇などがあります。特に大きな問題とされていたのが、原則として転籍(受け入れ先の変更)が認められていない点です。劣悪な労働環境に置かれても職場を変えることができず、結果として失踪を選ばざるを得ない技能実習生が後を絶ちませんでした。こうした問題を是正するため、技能実習制度は廃止され、新たに育成就労制度が創設されることになりました。
育成就労制度とは、廃止される技能実習制度に代わり創設された、外国人材の育成と人材確保を目的とした外国人受け入れ制度です。
2024年の法改正により、従来の「技能実習法」は「育成就労法」へと改められ、制度の目的や運用が再設計されました。国際貢献が制度目的とされていた技能実習制度に対し、育成就労制度ではその方針が改められ、育成就労産業分野において、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材の育成と人材の確保が目的とされています。
このように、新制度は技能実習制度の枠組みを一部引き継ぎながら、外国人を「労働者」として受け入れる制度としている点が大きな特徴です。
育成就労制度の最大のポイントは、日本で長期間活躍できる外国人材を確保することを目的とした制度である点です。そのため、外国人の労働者としての権利保護や、将来的なキャリア形成への配慮が強化されているのが特徴です。
技能実習制度では、原則として技能習得後の帰国が前提とされていました。一方、育成就労制度では、3年間の在留期間を通じて計画的に人材を育成し、その後「特定技能」へと移行させることが明確な方針として示されています。
特定技能制度とは、日本における深刻な人手不足に対応するため、一定の技能水準と日本語能力を有する外国人を受け入れる制度です。この在留資格を付与することで、人材確保が特に困難な産業分野において、外国人材の就労が可能となっています。
育成就労制度は、この特定技能制度への移行を前提にしたキャリア形成の仕組みが整備されています。この点が、帰国を前提としていた技能実習制度との大きな違いです。
特定技能については、こちらの記事もご覧ください。
技能実習制度と育成就労制度の主な違いは、制度目的・在留期間・日本語要件・転籍の可否等にあります。
以下、技能実習制度と比較しながら、育成就労制度の主な違いを整理します。
育成就労制度では、技能実習制度と異なり、就労開始前から一定の日本語能力が求められます。具体的には、就労要件として、日本語能力A1相当以上(日本語能力試験N5など)に合格すること、またはそれに相当する日本語講習を認定日本語教育機関等で受講することが要件とされています。
技能実習制度では最長5年間の在留が可能でしたが、育成就労制度の在留期間は原則3年とされています。ただし、育成就労制度では、3年の育成期間修了後、特定技能1号へ移行することでさらに最長5年間就業でき、さらに特定技能2号へ移行することで在留期間更新の上限がなくなるため、長期的に日本で就業・定着することが可能になります。
育成就労制度の大きな変更点の一つが、外国人本人の意向による転籍(受け入れ機関の変更)を認める点です。育成就労法では、外国人本人による受け入れ機関変更の申出に関する規定が創設され、一定の要件を満たせば本人の希望による転籍が可能となりました。現時点では、転籍の主な要件として、転籍先で新たに育成就労計画の認定を受けることや、元の受け入れ機関で一定期間以上就労していることなどが示されています。
技能実習制度では、技能実習2号を良好に修了した場合、特定技能への移行時に試験が免除されていました。しかし、育成就労制度では、原則として試験への合格が必須となります。
3年の育成就労期間を経て特定技能1号へ移行するには、以下が要件となります。
● 1年目試験として技能検定基礎級等・A1相当の日本語能力試験に合格
● 技能検定試験3級等または特定技能1号評価試験に合格
● 日本語能力A2相当以上の試験に合格
育成就労制度の対象分野・職種は、技能実習制度よりも縮小される見込みです。技能実習制度では、90を超える幅広い分野が対象とされていましたが、育成就労制度では、対象分野は特定技能制度で外国人受け入れが認められている産業分野(現在16分野)と原則として一致させるとしています。そのため、現時点で16分野に該当しない職種については、将来的に外国人材を受け入れられなくなる可能性がある点に注意が必要です。
育成就労は有力な選択肢ですが、即戦力を求めるなら「特定技能」という選択肢もあります。自社の状況に合わせて最適な制度を判断できるよう、3制度の条件・職種などをまとめた以下の記事もご覧ください。
育成就労制度では、外国人を受け入れられる分野(育成就労産業分野)について、特定技能制度の「特定産業分野」と整合させる方向で検討が進められています。ただし、育成就労制度の分野設定や詳細要件は、今後の分野別運用方針(告示・政省令等)で確定するため、今後追加や再編集の可能性があります。
特定技能の職種一覧については、こちらの記事もご参照ください。
育成就労制度は、単なる技能実習制度の代替ではなく、企業側の受け入れ責任と育成義務がより明確化された制度です。以下では、制度活用を行う企業が備えるべき実務上のポイントを整理します。
育成就労制度では、外国人ごとに3年間の「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構による認定を受けることが義務付けられています。この計画と実態に乖離がある場合、是正指導や認定取消しの対象となる可能性があります。
育成就労制度では、特定技能1号への移行を前提としているため、段階的な日本語能力向上の支援が欠かせません。企業には、就労開始前に日本語能力A1相当以上を満たしているかを確認したうえで、入国後講習や就労開始後の学習機会の確保、試験不合格者への再学習・再受験支援などが求められます。
育成就労制度は、外国人を明確に労働者として受け入れる制度です。そのため、労働条件や雇用管理の適正性がこれまで以上に問われます。雇用契約書と実態の一致や、賃金・労働時間・休日の適正管理、ハラスメント防止措置、相談体制の整備などが不可欠です。不適切な雇用管理は、転籍申出の理由となるだけでなく、企業の受け入れ資格そのものに影響を及ぼす可能性があります。
育成就労制度では、一定の要件を満たせば外国人本人の意向による転籍が認められます。中長期的な人材確保のためには、労働時間や休日の適正化、職場の安全衛生の確保、処遇・福利厚生の見直し、日本語学習や生活面の支援などを通じて、「外国人に選ばれる企業」であることが重要です。多言語対応の相談体制を整えたり、日本での長期的なキャリアパスを示すことも、定着促進につながります。
育成就労制度は、人材の確保などのメリットもありますが、企業側の負担や制度上の制約も少なくありません。ここでは、育成就労制度のメリットとデメリットを解説します。
育成就労制度の主なメリットは、次の通りです。
技能実習制度では、必ず従事する必要がある「必須業務」は全実習時間の2分の1以上と規定されていましたが、育成就労制度では3分の1に変更され、業務区分の範囲内で幅広い業務に従事することが可能になります。
企業が育成就労制度を活用することで、3年間の育成就労から特定技能1号(上限5年)、特定技能2号(更新回数の制限なし)という流れで、同一人材を中長期的に雇用できる可能性が高まります。計画的な人材育成と定着を前提とした、安定した人材戦略を立てやすい点が大きなメリットです。
育成就労制度では、日本語能力要件の設定、転籍制度の導入、労働条件管理の厳格化などにより、外国人を労働者として保護する仕組みが強化されています。これにより、不当な扱いや就労条件のミスマッチが減少し、結果として外国人材の定着率向上が期待できる点は、企業側にとっても重要なメリットです。
育成就労制度の主なデメリットは、次の通りです。
育成就労制度では、企業に対し、育成就労計画の作成・認定や、日本語教育・技能育成の実施といった明確な育成責任が課されるため、技能実習制度と比べて企業側の実務負担が増加します。
育成就労制度の対象分野は、特定技能制度と同様に16分野に制限されています。技能実習制度で受け入れが可能だった職種の中には、育成就労制度では対象外となるものもあります。そのため、業種によっては、外国人材の受け入れ自体が困難になる可能性があります。
育成就労制度では、一定の要件を満たした場合、外国人本人の意思による転籍が認められます。これは外国人材の権利保護という点では重要な改正ですが、受け入れ企業にとっては、人材流出のリスクを伴う点に注意が必要です。
特に、賃金水準や労働条件の良い企業が集積する都市部への転籍が進んだ場合、地方企業では育成就労制度の活用が難しくなる可能性も指摘されています。一方で、政府はこうした偏在を防ぐため、地方の優良な受け入れ機関に対する育成就労外国人の受け入れ人数枠の拡大など、必要な対策を講じる方針を示しています。
育成就労制度は、廃止される技能実習制度とは異なり、外国人材を計画的に育成し、日本での定着を前提とした新たな制度です。制度の施行は2027年が予定されていますが、受け入れ分野の確認や育成就労計画の策定、教育体制の構築など、企業側に求められる準備は多岐にわたります。
制度活用の際には、外国人雇用に精通した受け入れ支援サービスや専門機関を活用することも有効です。株式会社平山グローバルサポーターは、技能実習生や特定技能人材の受け入れ支援を通じて培った豊富な実績をもとに、コンプライアンスを重視した育成就労制度活用を支援しています。
育成就労制度への対応や外国人材の受け入れについて不安や疑問をお持ちの企業担当者の方は、ぜひ公式サイトをご確認のうえ、お気軽にご相談ください。